ヴィンテージのオーディオを扱っていると必ず「修理」というある種の壁に突き当たります。ヴィンテージと言うと聞こえはいいですが、興味のない人にとってはただのがらくたです。このがらくたを現代に通用しさらに感動を与える音を出させるまでの道具に仕上げようと努力をしています。
50〜60年代の真空管アンプの部品それぞれを、球の1本づつは言うに及ばず、トランス、電源系コンデンサー、信号系コンデンサー、抵抗の一つづつに至るまで値をはかり、今後の使用に耐えうるかを吟味します。
作業を進める中で、使用に耐えられないと判断された部品はたとえ、有名ブランドやあこがれのマークがついていても容赦なく取り外され、新しい、信頼できる部品に交換されます。作業は忍耐を要し、注意深くそして大胆に行われます。豊かな経験と深い知識、そして高度な技術が要求されます。
一連の作業は吟醸酒を仕込むのに米を研ぎあげる、あるいはダイヤモンドの原石をカットし研磨するかのようです。息を吹き返したアンプはこれまで聞いたことのない音を奏でます。時に優しく、または激しく、時に楽しく、あるいは哀しく、あるときは恐ろしい音で我々を包み込みます。
これまで抱いていたヴィンテージの真空管アンプとは全く違う音の世界が広がります。